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裸でも生きる/山口絵里子
マザーハウス代表の山口絵里子さんの起業の経緯について。
経営者の自伝だったり、自前の経営論みたいな本を読むことはほとんどないのだけれど、
自分と年が近いひとで、在野の民間企業で開発の世界に関わっているということからずっと気になっていたので
ずいぶん前に発刊されたものと最近発刊された続編を続けて読みました。
マザーハウスはバングラディッシュ、ネパールなど途上国と言われる国の素材・人材を活用して、
鞄をはじめとした革やジュートなどで作られる良質なものづくりを行っています。
http://www.mother-house.jp/
本書を読んでみて、本店が自転車で行けるくらい近くの下町にあることを知り、実際に行ってみると、
コーヒー豆の袋っていうイメージしかないジュートがこんなに綺麗に仕上がるものなんだ、と驚きました。
(ちなみに行ってみると丁寧にハーブティーまで出していただき、社員の方も本当に良い方でした)
バングラディッシュ、ネパールの現況に関して、全く知らなかったのだけれど、
ここで書かれていることもほんの一端でしかなく、もっと想像以上に深刻なことも沢山起こっているのだと思います。
そういった情況のなかで、これだけ品質の高いものづくりを一度きりでなく安定的に行っていく、
というところの経営努力は商品をみても並でない大変さが付きまとっているのだと感じます。
途上国のために、といった信念を持って開発の分野に興味を持って、
大学で学び各国を回り調査・研究を行い、国際機関での就職を望む若い人はとても多いと思います。
一方で、その狭き門をくぐりぬけて、国際機関に就職して調査・研究を行い、
実際にインパクトを与える施策を実行するまでにはとても時間と労力を費やし、ほんの一握りの人だけが実現できることなんだと思います。
民間という立場で出来ることは、国際機関で行うことに比べれば規模も小さく、与えるインパクトも小さなものになるけれど、
実際に現場を肌で感じることができる、現場とのつながりが強い、そして実行が早く、実践的に続けていくことで、規模を拡大していくことができる、
といったメリットも多くあります。
おそらくどんな分野においても、産・官・学のそれぞれの役割として、上記のことは当てはまるのだけれど、
開発と言う分野においては産を目指すひとが少なく、またその質も、せいぜい起こしている人もフェアトレードをやる、といったくらいでまだ発展途上なのだと思います。
こうしたなか産業分野でのひとつの成功モデルを示してくれている山口さんの功績は本当に大きなものだと思います。
その現在の規模のマザーハウスになるまでの経緯を書いている本書は、単なる経営者の成功体験としての自伝という意味だけでなく、
一つの事業モデルのケーススタディとしての役割も果たしていると思います。
情勢が不安定な中に生産拠点を置くことは、今後においてもいつどうなるか分からないリスクが大きな事業です。
今後も本書で書かれているような突然の事件のようなことも続くんだろうと思いますが、
優秀なスタッフと多くの支援者(ファン)が集まっている優良な企業であるので、こういったリスク要因は、
上手く克服していけるのではないかと思います。
本書を読んだところと、実際に本店の商品をみて社員の方に会った印象では、
企業としてとても良い組織を作られていて、上記のリスクもはねのけてくれそうなくらい期待できる好感がありました。
羨ましいと思うと同時に、自分ももっと頑張ろうと励みにもなるので、
こういった本もたまには読んで色々と考えるきっかけにしていきたいと思います。