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LIFE | yuki ota

パリでメシを食う パリに生きる人の空気感

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パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

著者が出会った、パリに生きる様々な日本人の物語。

読んでいるとその世界にすーっとはいっていくような感覚を久々に体験したくらい、その空気感が伝わってきます。

この著者自身もどうやって生きてきたんだろうか、と不思議に思ってしまいます。
どうしたら、こんなにも魅力ある人たちに出会い、その魅力を余すことなく書き記すことができるんだろうか、と。

それぞれの物語の端々に著者自身の魅力が見え隠れするところがあります。
被写体との信頼感がなければ、絶対に撮れないような写真、というのがありますが、著者の文章にはそれと同じようなものを感じます。

この著者でなければ、パリで生きる人たちの持つ独特の空気感を表現することはできないし、それを引き出すことさえできなかっただろう、と思います。
そもそも、著者がいなければそういった人たちが描かれることもなかったかもしれません。

“私は誰かの参考になるような話やサクセスストーリーを聞きたいわけではありません”と言うように、ここに描かれているどの人生も本当に面白い。

ヨーヨーを手に、サーカス一座とフランス全土を旅する男の子、
廃墟を不法に占拠したアーティスト集団に加わり絵を描く女の子、
フランス人に騙されて無一文になったベテラン鍼灸師、
恋の挫折を繰り返しながらキャリアの道を駆け上がる国連職員。

どの話を読んでみても、そこここにある日常とは繋がっているようでどこか違う、何か「フシギな筋が一本通っている」人達が描かれています。

淡々と物語のように一人の人生が語られているので、ついその世界に引き込まれたまま憧憬を抱いてしまいそうになるけれど、
よく読んでみると、決して良いことばかりの人生でない話が多くあります。

“いいことも悪いこともひっくるめてパリだ”と語られるように、この街に生きる人も、どうしようもなく辛いことも経験しながらここに生きることを選んでいる。
どんなひとの人生にも、辛く苦しいときや悩んで前に進めないとき、ふっと道が開けたとき、があると思う。
本著で紹介されているようなパリに生きる人は、そのブレ幅がほかの人と比べてそのブレ幅が大きく、そして前に向かうときの力がとても強いのだと思います。

僕自身の持つパリのイメージは、景観は整っているけれど、どんよりした空の色と、人通りの多い街路、早口のフランス語に、落書きだらけのメトロ。あまりいいイメージは正直ありませんでした。
ただ、パリという都市にあるパリらしさを感じたとき、そうした醜さも含めて受け入れられると同時に、自分もパリで生きていけるようになるのかもしれません。
少し気難しい、とても人間的な都市なのだと思います。

そして、そこで生きる多くの人の物語を抱え、それを紐解いてみると、これ程まで感情豊かで心踊らされるものが溢れてくる。

“人は本当にどう生きることもできる”

あとがきに述べた著者の言葉に、本著から流れるパリの風を感じ、少し身体が軽くなったような気がします。


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