帰省した際に、父母に連れていってもらった、多治見にある新しい美術館。
タイルの発祥の地、とのことで多治見に新しく作られたミュージアム、外観からとても面白い形をしている。
設計は、藤森照信氏。この日、ちょうどこの後に、ジブリの立体建造物展に行くのだけれど、ちょうどその展示の監修もされている。
言われてみると、どこかジブリを思わせる不思議な世界観が感じられる。
まさに、サツキとメイの暮らす赤い屋根の家のような、昔ながらの家の水回りにこそ、ここで展示されているタイルが使われている。
親世代の感覚では、なぜこんなものを飾っているのか、展示しているのか、というものかもしれない。
古臭く、子どものころに当たり前のようにあったかまどやトイレ、風呂場が展示されている。
よく滑るんだよな、目地が汚れるんだよな、といったように、あまりいい思い出は少ないかもしれない。
これらのものが、新しいダイニングキッチンやステンレス、あるいはユニットバスなどに取って代られた後に暮らしてきた若い世代からすれば、とても新鮮でしかし懐かしさを感じさせる。
そこにある懐かしさ、は自分が体感したものではなく、ジブリ映画や古いお話、親世代の古い写真などから、得た記憶や情報から成り立っているものだ。
ただ、その懐かしさも、改めて現代の感覚でデザインすると、新しく感じられる。
この展示は、採光の良い建物の最上階部分に展示されている。
光に照らされることの少ない、陰影の多かった日本家屋の奥隅で暗く鈍く佇んでいたそれらは、白い壁と強い採光のなかで、とても美しく飾られている。
水回りのジメジメした場所に置かれることの多いタイルのイメージはそこには無い。
古いものは光に照らされてこなかった。文字通り光を当てると、新たな価値をもったものとして生まれ変わっている。
そのことがとても面白い。
タイルは日本だけのものではない。海外に目を向けると様々な模様のタイルが作られ、飾られ、今も使われている。
日本の最近のリノベーション建築にも多くタイルが使われ始めていて、その価値はいま見直されている、というのは言うまでもない。
だからこそ、このミュージアムが価値あるものとして作られ、各地の各家庭で朽ちて捨てられるだけのものが救われ、守られている。
さまざまな形の色とりどりのタイルは、いま「かわいい」ものとして受け入れられている。
この「かわいい」の感覚はとても大事なもので、技術的なことや情報が不足している中でもその良さを本能的に理解することができる。
だから「かわいい」と思わせたら、勝ちだ。不思議と心を捉えるもの、として目に映る。
こうしたミュージアムが単独して作られ、伝統や町おこしといった古臭いキーワードを感じさせない形でうまく実現していることはとても喜ばしいし、ぜひこのままうまく続けてほしい。
私たちは次の世代のために、何を取り除き、何を残していこうか。